6/15/2013

夢想の永訣

8.June.2013     Hayama.Kanagawa.Japan




別れの言葉をずっと言いたいと思っていた。



3ヶ月目の月命日。

僕は夢を見た。
いつかどこかで聞いたような話。
それは、彼が生きている頃に戻る夢。

けれど、皆知っている。
彼がいつかいなくなることを。
時折寂寥感を覚えながら、それでも誰もがあの頃に戻ったことを喜んだ。

ふわっとした温かな感覚だけが残る幸せな日々だった。
だが、あの悲しい出来事を忘れ、
この生活がいつまでも続くと思い始めていた矢先、
僕は彼の命日が明日であることに気づく。
そして、皆に知らせるのだ。



最期の日。

彼はいつの間にか旅立つ準備をしていた。
行き先は誰も知らない。
彼は知っていたのだろうか?
本当はもう二度と会えないことを。

皆が彼のために集まり、一緒に写真を撮ったりしている。

これが最期だと知っているから、
それを悟られないように、必死にいつも通りの笑顔で接しようと努めながらも、
見えないところでお互いに目を合わせては泣いていた。

出発のとき、皆で手を振って見送った。

車に乗り込むその姿は、一番大好きなラグビーの高校時代のユニフォーム。



別れの言葉をずっと言いたいと思っていた。

“ありがとう”
“さようなら”
そんな事を言おうと考えていた。
でも、
彼も僕も皆の口から出てきたのは、この言葉。


“またね”